BSⅡで時々小津映画をやっていて、先日、「秋刀魚の味」を見た。小津安二郎の遺作らしい。
描かれているのは何と言うことのない日常の庶民の生活で格別盛り上がりのないまま終わる。 解説では「妻に先立たれた初老のサラリーマンと、婚期を迎える娘の心情を繊細に描いた父娘ものの名篇。長年小津作品で父親を演じてきた笠智衆による、娘を嫁がせる父の孤独と哀愁を漂わせ・・・」とある。
しかし感慨深い。描かれた世界が懐かしいというか、まるで別世界。製作が1962年(昭和37年)というから、我々が大学に入った年だ。この頃の日本はこんなだったか。考えてみたら、戦争の影がようやく薄れ、しかし、高度成長に入るちょっと前の、それなりに落ち着きを見せた時代だったのかもしれない。人と人の触れ合いが強いが同時にお互いに慎みがあった。人間が相対的に大きく、映画の主役を張れた時代。それから随分遠くに来てしまった。もうこんな映画は出来ないだろう。
高度成長という日本独特の事情を考えるのは早計すぎるか。欧米でもいま小津映画の評価がとみに高まっているとか。こういう時代に郷愁を感じる気分は向こうも同じなのかも知れない。それにしても、岩下志摩、岡田茉莉子、女優が皆綺麗だった。
そうか50年経ったわけだ。懐旧に駆られる―これまでも何度も繰り返してきたのかもしれない。
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